研究課題名「胸膜癒着に対する呼吸ダイナミックCTによる診断能の検討」
本研究はご本人から文書同意を頂いた前向き研究として行いました。2020年5月現在、研究のための検査は終了しており、結果の解析を行っています。
1.研究の名称及び当該研究の実施について研究機関の長の許可を受けていること
この研究の名称は「胸膜癒着(きょうまくゆちゃく)に対する呼吸ダイナミックCTによる診断能の検討」です。琉球大学医学研究科放射線診断治療学講座が主管となる研究であり、琉球大学の倫理審査委員会の承認、琉球大学長の許可を得ています。
2.研究機関の名称及び研究責任者の氏名
研究代表者(責任者)は、琉球大学医学研究科放射線診断治療学講座、山城恒雄(やましろつねお)講師です。共同研究機関として、大原綜合病院放射線科(責任者:森谷浩史副院長)、滋賀医科大学放射線科(同:永谷幸裕助教)、大阪大学放射線科(同:本多修講師)が合同して研究を行います。各施設においても、それぞれ倫理審査委員会の承認と許可を得ています。
3.研究の目的及び意義
「呼吸ダイナミックCT(深呼吸をしながらCTを撮影する方法)」は、肺の表面と、肋骨(ろっこつ)の内側にそれぞれ存在する「胸膜(きょうまく)」と言われる膜に、異常な癒着(ゆちゃく=くっついていること)が生じているかを観察・評価する検査法です。10年ほど前から、臨床上、必要とされる際に行われています。胸膜の癒着は従来の胸部CTや他の画像検査では観察がほぼ不可能で、呼吸ダイナミックCTのみで観察できる所見です。強い癒着が存在すると、外科手術の際に執刀医の先生が癒着をはがす操作を行わないといけないため、執刀医の先生には非常に重要な病的所見です。しかし、どの程度正確に胸膜の癒着が診断できるかを検討した、まとまった報告がありませんので、「呼吸ダイナミックCTによる胸膜癒着診断能」を明らかにすることを目的として本研究を計画しました。研究成果は、今後のより安全な外科手術のために役立てられます。
4.研究の方法及び期間
これから予定されているCT検査で「呼吸ダイナミックCT」を行います。これは、あなたの肺の動きや病気の影響を診断し、今後の治療方針を決定する上で必要な検査です。
本研究に同意いただける場合、あなたのCT画像を全国集計の一部に加えさせていただき、呼吸ダイナミックCTがどの程度胸膜癒着を診断できるのかを検討します。(合計300名の患者様を目標としています。)
本研究の研究期間は、琉球大学倫理審査委員会がこの研究を承認した日(2017年10月10日)から、2020年3月31日までです。
5.研究対象者として選定された理由
本研究は、「これから大原綜合病院で呼吸ダイナミックCTを含めたCT検査をお受けになる患者様」全員を対象としています。
6.研究対象者に生じる身体的負担、予測されるリスク、及び利益
撮影した画像は、あなたの肺の動きや病気の診断、今後の治療方法を決定する情報となります。
「呼吸ダイナミックCT」による放射線被曝は、約5-6mSvと予想されます。この放射線被曝(ひばく)は、国際放射線防護委員会(ICRP)が公表している、一般的な胸部CTの際の放射線被曝(約9.4mSv)を下回り、直ちに健康被害をもたらすような過剰な放射線被曝ではありません。ただし、このような軽微な放射線被曝が、将来にわたってどのような影響を人体に及ぼすかに関してはほぼ未解明であり(確率的影響と呼ばれます)、今回の「呼吸ダイナミックCT」のリスクに関しては(ほとんど存在しないものと考えられますが)「全く存在しない」とは断言できません。
本研究に同意いただける場合、撮影画像と胸膜癒着の有無に関する情報は共同研究施設の患者様のデータと併せて解析します。その際に個人が特定される情報はすべて削除されます。
7.研究に同意しないという選択肢があり、研究に一旦同意してもいつでもこれを撤回できる権利があります。
本研究への同意・不同意は患者様の自由意志に基づきます。また一旦同意いただいて、文書にご署名を頂いた後であっても、いつでも同意を撤回して頂いてかまいません。ただし、解析が終了し、学会発表・学術論文の準備が始まった後では、お一人のデータのみを削除することが難しくなるため、同意の撤回ができなくなる場合があります(下記連絡先までご相談ください)。
8.研究に同意しないこと又は同意を撤回することによって、不利益はありません。
本研究に同意いただけない場合、あなたの「呼吸ダイナミックCT」データはこの研究に使用しません。あなたの今後の診療において不利益をこうむることはありません。また、一旦同意された後に同意を撤回される場合にも、患者様が不利益をこうむることはありません。
9.研究に関する情報公開の方法
研究の進捗状況、学会や論文としての発表等に関する情報は、琉球大学医学部附属病院放射線科のホームページで公開します(http://www.ryukyu-radt.com/)。
10.研究計画書及び研究の方法に関する資料を入手又は閲覧できます。
本研究に同意いただいた患者様は、他の研究対象者等の個人情報等の保護や、本研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、研究計画書等の資料を入手または閲覧していただくことが可能です。「研究計画書」や研究の方法に関しての情報・資料をお知りになりたい方は、下記「14.本研究に関するご質問・ご相談等への対応」に示します、琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座の連絡先までご連絡ください。なお、その際には患者様が本研究に同意いただいたか再確認の上で回答し、当講座より郵送やEメール等で研究計画書・各種資料をお送りいたします。
11.個人情報の保護・取扱い
本研究に同意いただいた場合、撮影されたCT検査データや、臨床検査・治療所見など、個人名や当院での患者番号などを削除し、「匿名化された情報(どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されたもの)」として主管施設(琉球大学放射線診断治療学講座)にて管理します。学会発表時や論文作成時に、患者様の個人名等が漏洩することはありません。
また、この研究において収集した、対象患者様の情報は、厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」に基づき、対象患者様ご本人または代理人に対して以下の手続きで開示いたします。
受付窓口: 琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座(お問合せ電話098-895-1162)
*まず、お電話で患者様が研究対象者に該当しているかお問合せ下さい。
受付方法: 当講座への来訪のみ(来訪が困難な場合はお問い合わせ時にご相談ください)
申込者の範囲: 対象患者様本人、法定代理人、任意代理人(原則として確認のための書類をご提示頂きます)
手数料:開示に関する手数料は無料です。
開示内容:本研究において対象患者様に関して収集した全データ(当講座にて閲覧頂きます。写しをお持ち帰りになることも可能です)
12.収集した情報の保管及び廃棄の方法
CT検査データや臨床検査・その後の治療所見などの情報は、上記の通り匿名化した上で、紙媒体でまとめた情報に関しては琉球大学放射線診断治療学講座の施錠可能なロッカーで、またCT検査データに関しては、放射線診断治療学講座内で管理される解析用の専用コンピュータに一括して保管します。本研究において収集したこれらの情報は、研究期間満了日の2020年3月31日から3年間経過した、2023年3月31日まで保存するものとします。ただし、下記の通り別の研究にデータを二次利用する場合には、当該研究の研究期間が満了した日から3年後まで保存するものとします。その後保存期間が満了した後に、紙媒体で保存されている情報に関してはシュレッダーにて裁断・破棄、その他CT画像などの電子データに関しては解析用のコンピュータ等から削除します。
13.利益相反に関するお知らせ
本研究は、琉球大学放射線診断治療学講座とキャノンメディカルシステムズ社との共同研究契約に基づいて、同社より提供される共同研究費を研究資金とします。なお研究代表者(山城恒雄講師)含め、個々の研究者はキャノンメディカルシステムズ社との間に個人的な利益相反は有しません。また、本研究を遂行するに当たり、キャノンメディカルシステムズ社からはソフトウェアの無償提供等の技術的な支援を受けます。また、一部の患者様においては、匿名化されたCT検査データ、および治療時の胸膜癒着情報を、ソフトウェアの精度向上ならびに将来のさらによいソフトウェア開発のためキャノンメディカルシステムズ社に提供いたします(患者様の氏名が同社に伝わることはありません)。
14.本研究に関するご質問・ご相談等への対応
本研究への同意・その撤回等も含め、ご質問などがあれば下記琉球大学放射線診断治療学講座までお問合せください。
琉球大学大学院医学研究科 放射線診断治療学講座
郵便番号903-0215 沖縄県西原町上原207 TEL:098-895-1162、FAX:098-895-1420
15.本研究に参加されることによる、経済的ご負担または謝礼はありません。
本研究に同意いただいた場合、患者様にお支払い頂く追加の検査料などは必要ありません(通常の健康保険診療としての検査料はお支払いいただきます)。また、一切の金銭的謝礼もお支払いできません。
16.他の代替検査法に関して
呼吸ダイナミックCTに代わり得る「胸膜癒着判定」検査法は存在しません。
17.研究実施後における特別な医療の提供に関して
呼吸ダイナミックCTは通常行っている診療行為です。直接的な副作用・健康被害等が生じる検査ではなく、研究実施後の特別な医療の提供は行いません。
18.研究の実施に伴い、健康・疾患に関する重要な知見が得られた場合の対応
呼吸ダイナミックCTを施行したことによって、主な研究目的である胸膜癒着以外にも、様々な病的所見が観察される可能性があります。その場合は、放射線科担当医が通常の胸部CTの読影結果を含めて、直接説明します。また、他の診療医に情報が伝わるように「画像診断報告書」の中にその内容を記載します。
19.本研究によって生じた健康被害に対する補償の有無
本研究における「侵襲」はCT撮影による5-6mSv相当の放射線被曝です。現在の医学的知見では、この程度の医療被曝で直接的な健康被害は発生しないものとされています。しかしながら、現時点での医学的知見からは予測できない健康被害の発生を考え、琉球大学および他の共同研究機関3施設を含めた臨床研究保険に加入し、不測の健康被害の補償への備えとします。
20.収集したCT検査データ等の二次利用に関して
本研究に同意いただいた場合に撮影される「呼吸ダイナミックCT」から得られる情報は、世界的に見ても極めて先進性の高い生理学的データです。本研究での「胸膜癒着」の解析以外にも、さらに発展した解析・研究を行える可能性があります。肺や肋骨の呼吸運動に関しては未解明の点が多く、呼吸運動に関する解析が飛躍的に進むことが考えられます。
「胸膜癒着」の解析以外の二次的な研究を行う際には、別途研究計画書を作成し、倫理委員会の承認を得て行います。なお、患者様に改めてお電話をする等の追加の情報収集は行いません。
21.本研究におけるモニタリング・監査等の実施
本研究は琉球大学倫理審査委員会の承認に基づいて施行されますが、本学倫理審査委員会、および研究のモニタリング・監査に従事する者が、必要な範囲内において、患者様より収集した情報を第三者として閲覧する場合があります。その際には、患者様の匿名性・秘密が保全された状態で行われます。
平成30年7月1日
琉球大学大学院医学研究科 放射線診断治療学講座 研究代表者:山城恒雄(同講座講師)
大原綜合病院 画像診断センター 分担研究者:森谷浩史(同副院長)
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