臨床研究について

当院の画像診断装置を用いて行っている研究課題について以下に開示しています。
主として、一般的に行われている画像診断撮影について、よりよい撮影方法を探索する研究を行っています。
研究方法としては、観察研究、遡及的研究、模擬人体モデルなどを用いた研究が主体です。
遡及的研究とは、既に検査を受けられた患者さんの画像について画質評価や実効被ばく量の評価を行う研究です。
個人情報の匿名化は厳重に行いますのでご安心ください。(画質評価などの際には個人情報は匿名化します。研究成果の公開の際には改めて個人情報の匿名化を確認します。)
*なお、研究への参加に同意されない方はご連絡ください。

2019年5月18日土曜日

【研究課題名】医用データに基づいた呼吸中の換気と器官の動態に関するコンピュータシミュレーションの製作

【研究課題名】医用データに基づいた呼吸中の換気と器官の動態に関するコンピュータシミュレーションの製作
【研究の背景と根拠】呼吸は、内呼吸と外呼吸に分類される。内呼吸は、血液中の酸素を細胞内の二酸化炭素と交換(ガス交換)することである。外呼吸は、外気(空気)を肺胞内に取り込み(吸気)、肺胞内で血液を介して酸素と二酸化炭素を交換し(ガス交換)、二酸化炭素に富んだガスを大気中に排出(呼気)することである。吸気と呼気の過程を、換気と総称する。換気に関与する器官は、胸郭と胸膜ならびに肺胞と気道である。気道は、上気道(鼻腔と口腔、咽頭、喉頭)と下気道(気管、気管支)に区分される。換気に関連する器官の範囲は、顔面から上腹部(横隔膜)までの広大な範囲である上に、大部分は、骨組織(胸骨や肋骨など)に囲まれた含気器官である。そのため、医用画像では、換気中の器官の運動を可視化することは困難であり、換気中の器官の動態と呼吸機能との関連を検討することは、さらに困難であった。一方、わが国で開発された320列ADCTは、1回のスキャンで16cm幅の立体撮像が可能である上に、スキャン時間も0.3秒以下にすることができる。そこで、共同研究者の森谷らは、呼吸に同期させた連続スキャンによって、全肺呼吸動態撮影を行い、胸郭と気管、気管支の呼吸時の動態撮像(以下、呼吸ダイナミックCT)を可能にし、臨床に応用している(参考文献)。森谷らの研究により、換気中の下気道から胸郭ならびに気管支の動態の可視化が可能になったので、次の課題は、呼吸機能との関連の探求である。しかし、現状の機器では気管支より末梢の細気管支や肺胞の描出は不可能であり、新たな研究手法が求められている。そこで、本研究では、進展が著しコンピュータ技術を導入して、呼吸中の換気のコンピュータシミュレーションを製作する。呼吸中の換気のコンピュータシミュレーションが可能になれば、換気メカニズムが明確になり、加齢に伴う呼吸機能低下や慢性呼吸不全(COPD)などの病態解明、人工呼吸器の適正化さらに呼吸と嚥下の調節機構の解明に貢献すると考えられる。
【研究資料と資料提供施設、提供された資料の保管と廃棄】
1.研究資料と研究資料提供施設
 研究資料は、大原綜合病院画像診断センターで撮影した呼吸時のダイナミックCT(以下、呼吸ダイナミックCT)データである。呼吸ダイナミックCTは、1回転0.35秒・画像再構成約0.2秒の時間分解能をもつ撮像機器320列ADCT (Aquilion One®、キャノンメディカルシステムズ社製 )を使用し、被験者が5秒周期で呼吸を繰り返す間に、全肺野の動態を撮像して得られた4次元の呼吸動態データである。大原綜合病院では、数年前から主に肺がん患者の診断と治療を目的に、呼吸ダイナミックCTを撮像している。本研究の対象症例は、これらのうち呼吸ダイナミックCTと生理機能検査データの両方を対比できる30症例である。なお、本研究のための新たな症例の募集はしない。すべて過去の撮影データを使用する。
2.データの保管と廃棄
 匿名化されたデータを用いて武蔵野赤十字病院においてコンピュータシミュレーション製作を行う。研究材料(ダイナミックCTや肺機能検査データ)は、共同研究者のみが使用できる状態で武蔵野赤十字病院特殊歯科・口腔外科の部長室内で保管する。また研究終了後5年以内に匿名のまま、かつデータの再利用は不能の状態にして廃棄する。

【目的】本研究では、呼吸ダイナミックCTと呼吸機能検査データを活用して生体数理モデルを製作し、呼吸のコンピュータシミュレーションを製作する
【研究スケジュール】臨床研究倫理審査委員会承認後、呼吸ダイナミックCTデータの提供を受けてコンピュータシミュレーションを製作する。
【エンドポイント】30例の呼吸シミュレーションが完成した後、結果を学会等で報告し、peer reviewにて研究方法と結果の妥当性が承認されたときに終了する。終了予定は2021年3月31日である。
【研究方法】1.研究材料 呼吸ダイナミックCTと当該被験者の肺機能検査データについては、大原綜合病院の保有データを使用する。2.コンピュータシミュレーションの製作1)呼吸ダイナミックCTからの生体のモデリング 呼吸ダイナミックCTから得られる、胸郭と下気道の形状を時刻毎にモデリングする。細気管支と肺胞については、簡易版胸腔モデルまたは立方格子からなる肺胞モデルを製作する。武蔵野赤十字病院と東京理科大学工学部機械工学科山本誠研究室が担当する。2)気流解析 市販の気流解析ソフトまたは新たに開発するソフトを使って、吸気と呼気の気流解析を行う。東京理科大学山本誠研究室が担当する。3)呼吸シミュレーションの妥当性確認 気流解析結果を当該被験者の呼吸機能検査(スパイロメトリーなど)と対比してシミュレーションの妥当性を確認する。㈱明治の神谷哲氏の指導のもとに、武蔵野赤十字病院が担当する。
【予想される不利益】 過去のデータを使用してコンピュータ上で作業するため、心身や経済的な不利益は生じない。個人情報の保護について、連結可能な匿名化後のデータをコンピュータシミュレーション作成に活用する。コンピュータシミュレーション製作の作業者は個人情報に触れず、学会等での発表においても個人が特定できるような情報は公開しない。 本研究で使用するのは過去の臨床データであるため、被験者への謝金や交通費等の支払いはしない。
【有害事象への対応】 過去のデータを使用するので、該当しない。個人情報保護については、後述する。
【研究体制と役割の概要】本研究の研究代表機関は、武蔵野赤十字病院(代表 特殊歯科・口腔外科 部長 道脇幸博)である。共同研究施設である大原綜合病院画像診断センターの研究代表者は 森谷浩史(副院長兼画像診断センター長)、(株)明治の研究代表者は、神谷哲(技術開発研究所 G長)、東京理科大学の代表者は山本誠(工学部機械工学科 教授)である。大原綜合病院は、呼吸ダイナミックCTデータならびに当該患者の呼吸生理機能検査(スパイロメトリーなど)を提供し、武蔵野赤十字病院は、呼吸ダイナミックCTデータから胸郭や気管、気管支、肺の数理モデルの概要を製作し、東京理科大学は詳細なモデリングと気流解析を行い、解析結果と呼吸機能生理機能検査の結果を対比して、呼吸シミュレーションの妥当性を武蔵野赤十字病院と㈱明治が行う。
【研究費用】本研究に関して利益相反関係はなく、また㈱明治からの研究資金提供もない。

研究体制
【研究対象者等及びその関係者からの相談等への対応】相談等への対応の窓口は以下の通りである。
1)医療情報の取得と管理に関する相談 〒960-8611 福島県福島市上町6番1号 Tel.024-526-0300(代表)大原綜合病院画像診断センター センター長 森谷浩史
2)画像の活用やコンピュータシミュレーションに関する相談 〒180-8630 東京都武蔵野市境南町1-26-1 Tel.0422-32-3111(代表)武蔵野赤十字病院 特殊歯科・口腔外科 道脇幸博

【被験者用説明文と人権擁護のための方策】
大原綜合病院では、診療の一環として得た情報について、包括同意を得ている。したがって、診療外のデータ使用拒否を申し出ている患者情報については用いない。また、本研究は過去のデータを使用する研究であるため、新たに被験者同意を取得することが困難である。臨床研究のうち、患者への侵襲や介入のない診療情報等の情報のみを用いる研究に相当するため、国が定めた「オプトアウト」の指針に基づき、研究目的・実施について大原綜合病院・画像診断センター掲示板およびホームページにおいて公開し、拒否の機会を保障する。
データについては、大原綜合病院にて連結可能匿名化後に、武蔵野赤十字病院と東京理科大学でコンピュータシミュレーションのデータとして使用する。そのため、個人情報は大原綜合病院外には持ち出されず、公開もされない。

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